チームに何が足りなかったのか?:この夏のまさかの敗戦をスポーツ心理学の視点で検証
東邦対八戸学院光星の大逆転劇、サッカーオリンピック代表のナイジェリア戦での
まさかの守備の崩壊、何が選手たちに起きてしまったのでしょうか。
スポーツ心理学の視点で探ってみたいと思います。
光星は一時は7点差をつけ、9回の攻撃を残して4点差、圧倒的に有利な状況でした。
最終回に東邦の先頭打者が出塁します。
「先頭を出して動揺してしまった」(光星:桜井投手)
これだけなら、他の試合でもあったかもしれません。
ところが、この一打により球場の雰囲気が一変しました。
「全体が東邦を応援していた。全員が敵なんだと思った」
甲子園でのこの雰囲気に桜井投手は様々な感情を巻き起こしたことでしょう。
恐れ、焦り、怒り、(やってしまったという)罪悪感などが沸き上がり、
最終的には「何も考えられなかった。頭の中が真っ白になった」状態になってしまいました。
サッカーの日本五輪代表はどうでしょうか。
初戦の相手ナイジェリアがチームマネジメントのトラブルが続出しブラジルに試合当日に到着する事態となります。
日本代表としては大きなハンデキャップを抱えた相手との対戦になったのです。
ところが試合開始してみると予想外の守備の崩壊から5失点、懸命に追いすがったものの
打ち合いの末4-5での敗戦となりました。
遠藤キャプテンは試合後「ミスがあったときにもう1回自分から積極的にチャレンジする姿勢を個人個人が見せていかなければいけない。チームとしてのオーガナイズが良くても、最後のところでネガティブになってしまうと、今日のようなバタバタしたゲームになってしまう」と語っています。
予選で気力あふれるプレーをみせていた室谷選手も2失点目に絡んでしまってからは、積極的なプレーが消え、消極的な守備で相手に再三突破を許してしまいます。
オリンピックの舞台ですから、準備をしなかったわけでもなく、相手を甘く見たわけでもないと思います。
自分たちとしては想定外のことが起こり、それによって個々の選手の感情が揺さぶられ、「しまった」という思いから焦り、怒り、
恐れの中で次のプレーをしていかざる得ない状況に陥りました。
2003年の時点ですでに数々の代表チームにかかわってきたカル・ボッターリル博士はオリンピックや甲子園などの大きな大会では感情のコントロールが重要になってくると強調しています。
トップ選手やチームはサプライズに対する準備が重要で、大きな大会で起こるサプライズとは、観客の(自分たちにすれば)ネガティブな盛り上がり、予想もしないひどい立ち上がり、相手の予想外のベストパフォーマンスなどがあると指摘しています。
まるでこの夏の八戸学院光星や日本五輪代表の出来事を予言しているようです。
そうなのです。このようなことがオリンピックなどのトップチームのビックイベントではたびたび起こるのです。
技術トレーンングと同じように感情のマネジメントについてもトレーニングが必要です。
すでに、世界のトップチームでは感情のマネジメントのトレーニングがパス練習やウエイトトレーニングをするように通常のワークアウトとして行われています。
そして、個々の感情に対するトレーニングに加えて、予想しなかった状況へのトレーニングもすべきです。
これらはトレーニングによって手に入れたいくつかのスキルをいろいろな状況でいかに適切な選択して使うかをトレーニングします。
企業などの組織においても様々な経営・事業計画が作成されます。よい事業計画はリスクマネジメントがしっかり検討されています。
そして今後は実践の場ではさらに組織メンバーの感情のマネジメントも計画され事前トレーニングをすることにより勝ち続ける組織は持続していきます。